繋がる(続き)

その大坊珈琲は私がよく通る青山通りに面する小さなビルの2階にあり、

連れて行ってくれる日まで存在を知らなかった。

大坊珈琲店の扉は地球から知らない惑星へと瞬時に変える魔法の扉だった。

何もかもに頭を打たれた。

わたしは何故、この店を知らなかったのだろう。

もっと早く知って来ていたら。

悔やむ思いが湧き上がった。

 

大坊さんの在り方が、仕事への向き合い方が、

スイスイと表面を滑るアメンボのような私から、深く根を下している大坊さんは神々しかった。

たった1日の訪問だっけれど、今でも心箱の宝の一つにである。

それを今回、初めて入った福岡市の珈琲美美で久方ぶりに「大坊珈琲」の文字に再会し、

あの衝撃の扉からもう10年以上経ったことを思い出した。

私は惑星をスイスイではなくちゃんと深く掘り下げ、探検してきたのか。

コソコソと香りの湯気に隠れて振り返ることになったのだ。