その夜はハイボールを飲みたくなり、
音楽が欲しくて浮かんだのは大貫妙子さん。
テレビにyoutubeを映しだした。
大貫妙子さんの歌っている姿を観るのは初めてだった。
画面の向こうで60代を過ぎていると話している。
私もはじめて彼女の曲を聴いてから40年ちかく経とうとしているのだ。
急にハイボールの氷の冷たさが気になった。
彼女は繊細な筋を作る手でマイクの何かをごそごそと触っている。
何しているのかな。
ゆっくりと丁寧に歌う声が私の頭に綺麗な音符をぽぽぽと浮かばせる。
そのリズムに乗って私は携帯で彼女の公式HPを覗くと生まれが杉並区久我山と書いてあった。
そして今は札幌にも居を借りているとあった。
繋がりに喜んで、お問合せにメールを書いた。
「札幌でワインの美味しい店をたくさん知っています!」
札幌の美味しい店を教えてあげよう!行きつけがたくさんできるとたくさん友達ができるね!
そんな思考で、衝動的なメールを送信した。
テレビではまだ静かに穏やかに彼女は歌っている。
メールの返事など来ないとわかっていても書く私。
すでにハイボールの氷は溶けてしまってグラスの中身は寝ぼけ味になっている。
後日、ポチっと購入した彼女の自叙伝で、札幌に居を持ったのは既に10年近く前のことで、
たくさんの札幌での友人知人に毎夜誘われていると書いてあった。
そりゃそうだ。
ハイボール、美味しいころに飲んでからメールすればよかったかもね。