高野豆腐

ここ数ヶ月、出汁をとるのにハマり、方々からカツオ、昆布、椎茸などを取り寄せては

出汁をとり、ダメだしや合格認定なることをしている。

食材に合わせてあれこれ合うように出汁をとり、日本人特有の旨味なるものを舌で感じると合格となる。

先日、随分長いこと興味のなかった食材「高野豆腐」が買い物に訪ねたスーパーで目に止まった。

その袋に書かれている調理方法を読むと

「お湯だけではなく、出汁に調味料をいれてあるところに入れるべし」というようなことが書いてあった。

お湯だと戻しきれず固くなるという。

塩や醤油が入っていると固くならないという摩訶不思議な説明にすっかり興味をもった私はスーパーから連れ立ってわが家へ来たという高野豆腐様である。

合格出汁の挑戦の日々にぴったりなこの高野豆腐様はちゃぷんと私が丹精込めて作った出汁の鍋に入ると

あれよというまに出汁を皆吸い取ってしまった。

大事そうに保存瓶からおたまで出汁を鍋に付け足すが、じゅじゅじゅと音を立てるでもなく

付け足した汁をまた吸い取ってしまった。

これを見て何かに似ているなと思い、高野豆腐様を菜箸でつっつくと鈍い弾力がある。

そうだ、乾燥していくら水分を補ってもカサカサになる自分の顔を思い出した。

あなたも私同様、水分をかなり必要とする人(人ではないが)なのねと納得すると

気の毒に思い、出汁を保存瓶ごと鍋にトクトクトクと音立てて注いだ。

高野豆腐様は気持ちよさそうに汁に浮かんでいる。

気持ちよさそうなそのお姿を見て、わたしも慌てて湯船に浸かった夕暮れ時のこと。

もちろん夕食はこの高野豆腐様である。