袖すり合うも多生の縁

来月のはじめ

名前も存じ上げない方とお会いする約束をしている。

仕事ではなく遊びの。

先月のある時、見知らぬ番号から私の携帯に電話がかかってきた。

「あのー、お分かりになる?」と年配の女性の声。

おわかりになりません、ガチャン!といつもなら丁寧に切るところだが

女性は続けて私の行きつけの銀座の店名を口にした。

うっすらと記憶が喚起されてきた。

友人と夕暮れ早くから銀座の店で日本酒をおいしく飲んでいる時に

ガラリと一人の年配女性が入ってきた。

友人が離席した際、カウンターに腰掛けたその女性と二三ほど会話をした。

「どうぞ、私もいつもふらりと一人で来ますので何かの時に遠慮なく連絡ください」と言って

私はその女性に名刺を渡したことを思い出した。