会いたくなる人(中編)

そこへ水色の眼鏡をかけたトンボが飛んで来た。

”どこいくのさ?”と声をかけて来る。

夜なのに水色の眼鏡を掛けているなんて怪しい。

無視!無視!

歩き続ける私にトンボは鏡を空から落とした。

「自分の顔を見ると行き先がわかるよ」そう言って去った。

恐る恐る鏡を拾い上げると、鏡は半分割れている。

顔が半分しか見ない。

んんんー、見えるようで見えない。

でもこの半分見えるのが私なのか。

すでに頭より身体の方が大きくなっていることに気が付いた。

しかも尾が無い。

もう泳げないのかな。

それともこれから泳ぐ必要のない場所で生きるのかも。

何だか生まれた頃に比べて私は随分変わったな。

これからどう生きてゆけばいいのだろう。

どこで、どんな風に。

トボトボ歩き疲れて目の前にある桑の葉のベッドに潜り込んだ。

「誰?そこにいるの」

ベッドの中から声が聞こえた。