行路

読まずにいた1年前に自分に宛てて書いた手紙を読んだ。

便せん3枚に丁寧に書かれた自分の文字が何故か少し懐かしく思えた。

手紙を書いている時、夕陽が部屋の中へ長く伸びソファをオレンジ色に染めていたのがつい数日前のように覚えている。

航海の波と天候により針路を変えた船のように手紙に書いていたことと今は行き先が違う。

針路を目指し舵を取っていても天候による想定外の波には逆らえないものなのだろう。

流される先もわからず、辿り着いた島で楽しく暮らせるのかと危惧しつつ。

気づけば舵もオールもない小さな舟に乗っている。

それでも歳月は無情に流れ、また無償の企てをしてゆくのだ。

方位磁石を頼りにまっすぐではないがどうやら進んでこれたようだ。

すこし疲れた私に一年前の手紙は私を諭す。

「この手紙を読む私へ改めて。

友人、両親、知人、仕事の方々に感謝してますか?

自然はどうでしょう。

ゆったりゆっくり、温かくやさしく強い人でいますか?

何か辛いことがあっても喜びとして受け取れる人でいてください。

あなたはもっと羽ばたけます。

今日をありがとう。2013年1月21日」

波間に揺れた小さな舟の航海は終わり

今私は自分の足で、二つの眼で、行路にゆく気がする。