一人一つの舟

隅田川を行く屋形舟。

浴衣姿で食事と落語を楽しむ目的に。

見知らぬ者同士が乗り合わせる。

 

入院中の元力士の夫を支える新婚の女性

日本一のダイヤモンドカット技術を持つ70歳の職人

華麗な舞踊の師匠とその見習い

日本丸で活躍する若い男性

NHKプロフェッショナルに出た年配女性の船頭

お茶を点てる浴衣が似合う元キャビンアテンダント

親を看取り自身の数度の手術をしながら自活する60代の女性

皆の前で真剣勝負の粋な落語家

司会をする百貨店社長秘書の男性とその妻

 

皆それぞれの舟

それぞれの船頭

この一瞬ごとに

人生の舵をとり

見る景色を獲る

行き交う瞬間の

違う舟の存在に

私達はある意味

それぞれであり

一つでもあると。