もっきり

ご存知ですか?

もっきりという言葉を。

まるっきり、

それっきり、

これっきり、

これらと音感は似ているけれど意味は似て非なるもの。

知っているあなた、日本酒通ですね。

私は通ではないけれど、お酒デビューは日本酒です。

ビールは嫌い。

美味しがわかりません。

 

そう、日本酒は美味しいのです。

そしてこのもっきりこそ、更に日本酒を美味しくしてくれるのです。

もっきりの正確なご説明はチャットGPTにお任せしますが、

わたしの中でのもっきりは以下の意味合いを持つ。

「この日本酒をグラスでください」

『はい、かしこまりました』

『おまたせしました。』と私の目の前に少し深めの小皿か升を置き、その中に空のグラスを入れると、一升瓶を傾けながら、とくとくとくと日本酒をグラスに流していく。

「あーグラスからこぼれる!」という光景を目の当たりにしながらドキドキしていると、その溢れた日本酒は下の小皿か升に流れ落ち、

みるみるその小皿か升も溢れんばかりになる。

どうこの小皿か升を持ち上げ、呑んだらよいのだろうと思案するほどの並々のお酒を見ながら、

心は非常に満足し、もし側に押しボタンがあるなら「YES! YES! YES!」と

連打撃ちをするだろう。

目の前にいる注いだ店員さんが素敵に見え、

このもっきりをさせているお店の心意気、店の姿勢を感じて、美味しさ倍増になり

「またこの店にこよう!」となるのだ。

これが私のもっきりである。

さて、先日、奈良でとてもびっくりするほどの美味しい鰻を食した。

その際に、もちろん日本酒のグラスを頼んだのだが、

アルバイトの若い女の子がグラスと小皿を運んできてそのまま置いていった。

覗くとグラスの中には既に日本酒が入っている。

しかもこぼれるどころかグラスの縁まで余裕が数センチもある。

これではグラス下の小皿は不要ではないか。

アルバイトの女の子が運ぶ時に溢れないようにするための小盆に過ぎない。

押しボタン「BO-! BO-!BO-!」の連打である。

私の心の中はつぶやく

「あー、これで日本酒のもっきりが見れたら、もういうことなしの鰻だったなー」

はい、その通り。

もっきりはその店の心意気そのもの。

並々と受け皿に溢れる光景は、なみなみと客に愛情を注ぐ姿と重なるのである。

グラスからこぼさないもっきりなら、ペラリとしたコースターでよいのだ。