居たであろう場所

瀬戸内海の東部に浮かぶ小さな島へいった。

ぎゅうぎゅうと満席のフェリーに乗り、海を進む。

着いた小さな港。

案内係のこの女性はここでどのくらいの歳月、仕事をしているのだろう。

髪の毛と大差ないほど、肌も焦げている。

どかどかと島に上陸する私たち旅行者150人。

この重さで島が傾くのではないかとイタズラに思う。

目的地への交通手段はマイクロバス。

つぎつぎに乗り込む、だけど乗り切れない。

臨時便と書いた派手なマイクロバスがやってきた。

何かの映画のネコバスを思い出す。

と、すると私はメイといったところか。

とうもろこしをもって道端で転ぶメイ。

わたしもよく道端で転んでいたな。

誰かが居たであろう気配のする島は過ぎてきたことの事柄を、これでもか、これでもかと思い出させてくる。

何故か笑っているものより、転んで痛かったことの思い出は深く強い。

私もいずれ、どこかの土地で居たであろう人の一人となるのだろう。

今は転ぶこともほぼ無くなり、道にも迷わず日々は進む。

小さな島を巡りながら、小さな思いが巡る。