母と歌をうたう(その2)

さて、2ヶ月経ち、この間、何が起きたか!

開始から一カ月後のある日、

2階で先生と母と3人で発声練習をしていると下から父が上がってきたではないか!

「いやーどうもどうも、お初にお目にかかります。

家内と娘がお世話になっております」。

母と私は驚きつつも、突然の幸福な出来事にすぐに父の席を作った。

「あーあーあーあーあー。いーいーいーいーいー。声が昔みたいに出んな」と父。

「いえいえ、出てますよ」と母。

「素敵なお声ですねー」と先生。

父の参加に1年かかるのを覚悟していた私は、1ヶ月前に夢見た光景が、

目の前で実現し、繰り広げられていることに我ながら驚いた。

歌のレッスンは終わり、先生が帰られたあと父はリビングで昭和の懐かしい歌をつぎから次へと歌い続けている。

お昼ご飯にしますよ、という母の言葉も耳に入らないのか、

立ちながら窓の方をみて歌っている。

これなら来週の歌のレッスンも父は愉しみに参加するだろうと私はほくそ笑んでいた。

その次の週、実家を訪れると父は開口一番に私に訴えてきた

「先週歌ったあとは呼吸も鼻の通りもよくなったんだが、次の日から、前より酷くなったので歌が原因だと思うんだ、だからもう歌は歌なわい」

毎週、父の歌のレッスンが続くとは思っていなかったが、

ここでもまた、具合が悪い、歌がいけない、と何かのせいにしていることが

残念だった。

ま、仕方ないかと受け入れて、母とのレッスンに集中する。

それが母のこれまで知らなかった一面を垣間見る時間にもなり、非常に愉しい。

そして、母が劇的に声がでるようになり、音程も安定し、ものすごい成果をだしてきた。

何より歌をうたう時間が楽しそうだ。

かくいう私も、これまで使われていなかった肺活と内臓・神経経路をノックしたのか、

汗をかきかき、声の音域が広がるという、棚ぼた?副産物を手に入れている。