小心者なので

それは、生まれたころからあったのだろうか。

私がたまたま出くわさなかっただけなのだろうか。

3年前に初めて出くわして、ここ一、二年、時折、出くわす。

出くわす度に「ひぇ」となる。

男も女も、である。

そして私よりかなり若い。

その正体は

「したいです」。

もちろん死体ではなく、I want to 何々したいです、の「したい」。

メールで  ”資料を送っていただきたいです。”とか

”またご連絡するので相談したいです”とか

”調整してほしいです”とか。

この手の文が来ると私はとても怖くなる。

怖いで思い出したが、私は外資系のインテリア会社にいたころ、尊敬していない女上司に注意されたことがある。

「あのねー、カオリンさんのメールってだから何?っていう感じなの。どうしたいか、どうなのか、どうだったのか結論、結果、主張がはっきりしてなくて判りずらいのよ!お察しくださいのようなメールだと何がいいたいのよ!とまたこちらから質問メールを返さなくちゃいけないでしょ!」。

隙のない、揚げ足をとられない、突っ込みようのない彼女のメールはさすが東京首都圏でブランドイメージを背負い、

毎月すごい金額を売り上げ、全国トップ販売員になる人だと思った。

退社後、自分で仕事をするようになって15年。

指摘する上司もいないから今の私のメールがどうなのかよくわからない。

もし知らずに私の文で人を傷つけたり、怖らせたりするのは嫌だな。

それでも毎日1日50件ほどのメールを読んで返事を書いているとこうなる

「それ、この間も訊いてましたよね!」

「メールに書いてあるのに読んでいないのでしょうか!」

「先にいってよー」

「えー今頃!」

理不尽なお願いごとのメールがくると”何ですと!”と戦闘態勢。いえ、粛々とお返事。

キャパの無い小さな私の心の叫びを

グレイな顔したパソコン画面だけが愚痴を聞いてくれる。

そんなところにI want toのメールがくると ”ひぇーどうぞどうぞ、お好きに”となるのだ。

しかし以前もこの世にあったのだろうか、したい、の文。

最近、気になるのはお察しくださいのメールで相手が読み取れず、I want to を起こしてしまっているのかと。