着物が好きで、着物の仕事を始め、着付け教室までしていた母の影響で私も子供の頃から着物が好きになった。
その着物がきっかけで日本の文化が好きになったのかもしれない。
時折、実家を訪ねて母に着せてもらうことを一つの親孝行と都合よく思い、そして、長年着物を着ていた母独自の着方に触れる貴重な時間でもある。
母も昔のことを思い出し、とても生き生きする瞬間のように見え、その生き生きしている母に触れると日々老いていく母の姿に、切なさや寂しさを感じることから瞬間離れられる気がする。
そう思う私は心のどこかで親の老いを直視できていないのだろう、自分自身も老いていることを忘れている。
昨日、今年初めて帯の結び方を習いに実家にいった。
「貝の口」の結び方を習いたいと希望し、姿見鏡を前に母に自装してもらう姿を私が録画するという予定だったが、
母のぐるぐると巻く帯は短くなったり長くなったりしている。
半幅帯を使って貝の口の自装はあまりしたことがないというので、今度は私に着付けてもらうが上手くできないようだ。
背中越しに「こんなにできなくなるとはびっくりだわ」と結びが下手になった自分を叱っている。
結びなれていない浴衣の帯だったからか、今回初めて完結せずに習いは終わった。
貝の口は着物を普段着として着ることに憧れる私にとっては鍵のようなもので、着物生活を送るための口でもある。
私の帰る背中で母が「今回はお役にたてませんでした」としょんぼり言っていた。
次回はなるべく早めに、母の得意な帯の結び方を希望しようと思う。