忌野清志郎

10月11日生まれの少年が、お茶を飲みにいらっしゃいませんか?と16歳の私に手紙をくれた。

その封筒の差出人の名前に「忌野清志郎を尊敬する者より」と書いてある。

当時の私はその名前すら読めず、清志郎が誰だかもわからない世界に生きていた。

尊敬する者の正体は私が10歳から好きだった男の子で、好きすぎて運動会以外に手も握ったことがなかったほどだった。

その少年からの手紙には日々のことが書いてあり、最後の方に『よかったら私の家でこれからの日本の未来をお茶を啜りながら一緒に話しませんか』で結ばれていた。

今にも駆け出して、お茶を100杯でも飲みたいですと言いたかったのに、私は言葉足らずの返事を書いてしまい、

好きすぎる少年を知らぬ間に振ってしまっていたことをそれから数日して気がついたが後の祭りだった。

その一件から40年も経つのに忘れた頃にときどき夢を見る。

寂しそうにしているその少年の目。

本当はお茶を飲みに行きたかったのと声を出している私。

その声は少年には届かず、どんどん姿が遠くにいってしまう。

夢から目覚めると心はびっしょり泣いていたのがわかる。

濡れた心を乾かすためか、この夢を見ると清志郎の曲を聴きたくなる。

 先日、また久しぶりにこの夢を見た。

起き上がり清志郎のジョン・レノンの『イマジン』のカバー曲を選んだ。

今、今の時世、心に沁みる、沁みる、沁みる、このイマジン。

少年には清志郎を教えてもらったことに感謝したい。

そして今、本当にお茶を啜りながら日本の未来、世界の幸せを語りたくて仕方ない。