数年後に還暦を迎えるというのに、まさかのことに出くわした。
食いしばり防止マウスピースの作成。
気がついたのは30歳代だっただろうか。
口中、両方側に歯形がつくようになった。
まさに、歯の形がつく。
ギザギザと後がつく口中は何故つくのか不思議なほどで、
でもある時はついていなかったりする現象なので、
きっと口の中が食べたもので浮腫んだりするのかも、
いや、ずっとパチパチとパソコンを打つのに下をむくから、浮腫むのかも。
そう、漠然と思いながら20年以上たっていた。
毎年の歯の検診で指摘されてこなかったのに、
引っ越し先で通うようになった歯医者の先生に初めて指摘されたのだ。
指摘されてから数日後、嘘のようにある歯が沁みるようになった。
歯医者へいくと食いしばりが原因でエナメルが剥がれてきているとのこと。
もちろん長い年月でなった現象で、食いしばりによる歯ぎしり歴はそうとう昔からあるのではという。
先生、自分で歯ぎしりしているかは気がつかないものでしょう。
そう返すと撮った写真を見せてくれた。
なんと、鍾乳洞のようなかたちをしているはずの上の歯が台形になっている。
これはかなりの年月がないとつくれない形だと言葉も出なかった。
すると先生は歯ぎしりを防ぐためにマウスピースを作りますからね。
そうして2週間後にマウスピースは出来てきた。
「はい、はめてください。はい、外してください。上手ですね。ピースの磨き方は、こう歯ブラシで傷つけないようにしてくださいね」
助手の方が丁寧に説明する。
ピースをいれるケースもありますので、と渡されていよいよ入れ歯を作った気になり、履いていったおろし立ての銀のスニーカーが気恥ずかしく感じた。
ま、確かにこの世に生まれてからサラリーマン含め従事した仕事を数えれば40種類。
引っ越し33回。
心身の疲労は何のその、そう体に言い聞かせて鞭打ってきてしまったからな。
ここ数年、反省してあれこれ体のケアの時間もお金もかけているのに、歯にも鞭打ち被害がきていたとは。
「剥がれたエナメル質はもう戻りませんからね、大事にね」と先生。
そんなー。
極度のストレスで歯ぎしりを続けていると、エナメル質が剥がれて視覚過敏になるので気をつけて働きなさいよ、と誰も教えてくれなかったよー。
今度の引っ越しはお任せパックにしよう。