このバーは1985年に誕生。
当時はバブル時代とでもいうのだろうか。
札幌に37年続くバーはそうない。
まして札幌を見渡せるなんて。
焼き餅を抱くほどの先見と洗練。
そのバーのオーナーがユーラシア404という小樽に近い張碓というところに海と空と、
トンネルを潜る電車しか見えない場所に作られたバーがあった。
同じオーナーのバーだ。
わたしはその404へ2回ほど行ったことがある。
今でもあの空間を経験できた自分は幸運だと思える場所。
誰がつれていってくれたかは全く覚えていないが今は感謝、感謝。
404の説明は省略するが今は千住博さんのアトリエになっているそうだ。
今、404へ行けないのは残念だが、N 43はまだ進行形。
暗闇で夜景と空間を利用して口説く男たちの心配も不要。
よし、それならとタクシーに乗り込んで開店時間そうそうに辿り着いた。
店内はわたし一人。
長いカウンターの真ん中に腰掛けゆっくりとウイスキーを飲みながら空を見ていた。
30年ほど来ていなかった空間は周りの樹々が伸び、窓からの家々が増えていたが
店自体は全く変わっていない。
バーの方に、オーナーの様子を訊くと今89歳だという。
父と1歳しか変わらなかったということにも驚いたが、改めて、この場所を選び、このバーの設えを見渡し、
20代では気が付けなかった細部の仕掛けに感動した。
もう焼き餅ではなく羨望である。
薄暮からウイスキーの色より濃くなった大きな空と、眩しいネオンが増えた札幌の街を観ながら、
以前、こちらのオーナーが言われていた記事を思い出した
「素敵な空間とはそれで商売を成功させる、儲けるぞとかいったことに関係がないとできないんだよ。
必死さがあると作りだせないんだよね」
納得。