雨の街を

2歳上の姉がよく聴いていた。

荒井由美さんの『雨の街を』は1973年の”ひこうき雲”のアルバムレコードに入っている曲。

この曲と彼女の声が好きだった。

初めて聴いたのは中学生になって間もないとき。

いろんなことが不器用すぎて、

生きるのってなんだろ、しんどいな、と毎日悩んでいた。

そんなある夕刻、

雪で真っ白になった道路に、街灯の明かりが右へ左へ道を照らし、

その明かりは夕陽のようで、朝陽のようで、

水たまりを追って跳ねる子供のように、その道路に落ちるあかりを追っていたら、

音も、空気も、すべて止まった世界に入り込んだ。

ただ、ただ、ただ、ただ雪が降っていて、空にむけた自分の顔にどんどん降り注いで。

すると、

いいや、まだいいや、と思ったら音や空気が動き出し、

私は家へ帰った。

二階の部屋にあがると隣の姉の部屋からこの曲が流れていた。

今でも、この曲を聴くとその時の感情を思い出す。

あの頃の不器用な自分を思い出す。

何より、

ただただ降っていた白い雪と止まった世界が今も現れる。