鐘と笛

一人で行ったことのない畑へ車で行くことになり、

まずは8年ぶりに車を運転しなくてはいけないということで、

カーシェアリングの軽自動車を利用することにした。

初めての軽自動車に乗り込んですぐに祈った。

"まずは無事に車の流れに乗って、あおり運転の被害に遭いませんように”

”アクセルペダルを間違える事故に巻き込まれないように”

そして

”ヒグマに出逢いませんように”

ここは北海道、最近ヒグマで怖話題の山へいくのだ。

ガーァゴーォォオと音立てながら山道を走る。

昨夜まで運転できるのかと情けないほど気後れしていたが田舎道なので案外スムーズについた。

畑に到着して早々に鞄から連なりの鈴を出す。

一人で畑へいく私を心配した父が持たせたこの鈴は3つ連なりシャンシャンとよい音がする。

よい音ではむしろヒグマが喜んで現れるのではないかと思いながら腰につけた。

お次はipone musicをかけてノリノリ風な音を流す。

これは私が一人で寂しくないように。

汗を掻きながら畑の農作業を一通りしているとカーシェアの返却時間が近づいていた。

パタパタと片付けて運転席に座ると突然女性の声が、

「もうそろそろ返却時間が近づいています!」

そ、そうです、知っています!

カーシェアのナビが話かけてきた。

ブーンンンゴーォオオと山道を下り、大きな道にでた私にカーシェアさんは久しぶりに運転する私に気遣ってか、

最後までよく喋りかけてきた。

お陰で?無事に車を戻し、任務を完了したことを父に電話で伝える。

数日後、また畑に行くことになる私に父が「洗っといたから」と笛を手渡した。

ピーとなる運動会の時に使うような笛。

そしてこれまたリーンリーンとよい音が鳴る小さな作家物の鐘。

ん?鐘?鈴じゃないの?

ありがたく貰い受け、帰宅して運動会の笛は猫の置き物の首に、

リーンリーンと音色がよい鐘は下に短冊をつけ、風鈴に姿を変えて窓の風に吹かれている。