同居していた祖父はいつも着物を着ていた。
寝る時は浴衣、夏は甚平、他は着物。
冬の着物の下にラクダ色の股引が見え、本当にラクダの股引というのは存在するんだなと知った。
そんな祖父は外に出かける時はスーツに着替え、帽子を被る。
時折、杖を持って出かける姿は外出を愉しんでいるのかと思えた。
帰宅するとすぐにスーツを脱ぎ、
あぁ疲れた、少し横になると言って祖母に布団を敷いてもらっているのを見た時、
私用を済ませやっと帰ってきた祖父の老齢な身体の負担を当時のわたしはまだ子供で想像できなかったが、
それでも着物に着替える祖父を見ると、そんなに着物は楽でよいものなのかと思うようになり
わたしも50歳過ぎた頃には着物を着る生活にしたいと希望を抱いた。
その50歳になった私は着物の先生をしていた母に着付けを教わり、真新しい着物を譲り受け、自分の寸法に24枚ほど和裁の方に直して貰い、着る機会を増やしている。
いやはや、半襟つける、汚れをベンジンで落とす、吊るす、たたむ
着るのも大変だが手入れも始末も大変でテンテコ舞い。
さっさっとペラペラなワンピースに着替え、極楽じゃ〜を味わう。
これでは祖父と真逆だなぁと失笑しながら、わたしが男ならもう少し着物も楽に着れたかも。
いま、着物と着物でない服をいったりきたいりしている。