札幌の天ぷら屋の女性

今年もあと2回となった札幌の帰省。

すっかり寒くなった札幌で両親と食事会を開催することにした。

出不精になった老齢夫婦に食事のリクエストを訊くと天ぷらなら出かけるという。

わたしも久しぶりの天ぷらとあって、すでに日本酒とホクホクとした天ぷらが目に浮かんでくる。

タクシーに乗り合わせ意気揚々とカウンターに並んで腰掛ける。

おまかせコースは黙っていても出てくるのが良いが、次は何が出て、あといくつ食べるのかまったくわからない。

その不安と愉しみが一緒くたになっていると日本酒のメニューに知っている名をみつけほっとして注文する。

徳利を傾け、天ぷらを待つ、食べてはまた徳利を追加する。

父も呑んだことのない銘柄に陶酔しご機嫌になっている。

まして父の好物の大きな丹波の栗が天ぷらで上がってきた時はお誕生日のような盛り上がりよう。

さて、帰りのタクシーで今夜の一番美味しかった食材は何か?と訊くと

揃って「栗!」と答える両親にやっぱりなとほくそ笑んでいると、

「カオリンさん、少しは女性なんだからお酒の量を慎みなさい。恥ずかしい!!」と注意された。

少しは女性?

わたしはしっかり女性ですけど!!と言い返そうとしたが、母は「女性なんだから少しはお酒の量を・・・」といいたいところ、順番が変になったのだろうと思い言うのをやめた。

なるほどね、そんなこと呑むようになってから一度も考えたことなかった。

女性は楚々として、守って欲しい風にお淑やかで控えめでなければいけないのか。

そうか、そうか。

だから近頃、わたしがお茶を習ったり着物を着るようになったのは、更に日本酒が呑めるようになった反動かもしれない。

母よ、すみません。

かなり楚々とした女性からは遠いかも。

やっぱりわたし、”少しは女性”なのかしらん。