時折、家の脇の神田川の遊歩道から上がる階段を口笛を吹いて歩く人がいる。
そのうまい口笛に気がついたのは今年のお正月くらいから。
今日も色気のある音色を奏でて音が近づいてくる。
窓の横を過ぎ音色が小さくなってゆく。
階段を上がるその口笛の主はきっと父より若いと思う。
窓を覗けば確かめられるが見ることはしない。
父も昔よく口笛を吹いていた。
あまりにも上手なので口の中に笛があるのか?と覗いたほどだ。
音色よく、音程よく。
思えば不思議な行為で、始めた人はいつのどなた様だろう
子供心にそんなことを思い巡らしながら真似するがピーしか鳴らず。
父が口笛を吹くとご機嫌だなと子供心に感じ嬉しくなったが、もうかなり前から聴いていない。
入れ歯だと吹けないのか。
孤独な境遇で育ち戦争体験のある父は口笛を吹きながら自分を鼓舞していたのだろう。
ここしばらく、口笛を吹く人を見かけ無かったので階段を上る人が懐かしさを運んでくれた。