窓から見える隣の敷地の竹が昨年夏ごろから急に2本だけ背が伸びた。
「元気ですか?」と時折風に揺られて窓の外からこちらを覗き込むような姿が愉しく愛おしんでいた
昨日の大雪でその2本の竹が大きくこちらに傾き窓を叩き始めた
「寒い寒い開けてよう」とノックをしている
徐々にそのノックは強風と共に「ガッサ ガッサ。ギー」という固い音を立て
灰色の暗い雪空の下で怖い生き物に姿を変えている。
夜中になればどんな音になるだろう、窓を割ったりしないだろうか
そんな心配が起こり大家さんに連絡した
「隣の竹が窓を叩いています。今日でなくても良いので切ってください」
しばらくすると隣の敷地の管理人がその2本の竹を揺らしているのが見えた
雪を払えば竹もまっすぐになるかと見ていたら2本の竹があれよと言う間に消えている
窓から覗き込むとその残骸もなくすでに切られたことがわかった
もし私が「竹の雪を払ってください」とだけ大家さんに言っていたら
あの2本の竹は切られずに済んだのではないか
そう思うと胸が苦しくなった
今朝は昨夜の雪が溶け始めキラキラとあちこちが眩しく光っている
窓から覗き込む2本の竹の姿をもう見ることはできない