チューリップ

カオライン「デートにいってきまーす」

父「カオラインの買ってきたチューリップの球根はいつ植えるんだ?早く植えてあげないと死んじゃうぞ」

カオライン「うん、帰ったらする」

その日の深夜に帰宅すると、玄関の庭咲きにこんもりと暖かそうな土に埋もれたチューリツプを見かけた。

父があれから植えたとわかりチクリと罪悪感を感じた。

しばらくするとチューリップは小さな緑の顔をニョキと出している。

私の嫁ぐ日が近づいて、この家から引っ越しする日が決まった。

家財道具をトラックに積み込み、

庭のチューリップも連れていってあげなくてはと思い、シャベルで植木鉢に移し替えた。

掘った庭の土にチューリップの居た穴が空いている。

この家から飛び立った後の私の痕跡も、穴があくのだろうか。

何か申し訳ない気がして、植木鉢のチューリップを庭の穴に戻した。

あれから歳月が流れ今でもあの場所にチューリップを見かけると戻してよかったと思う。

私とチューリップだけが知っている思い出。