25年ほど前から仲良くしている友人男女2人と一年振りに銀座であった。
幹事役のわたしは一次会は焼き鳥、二次会は居酒屋と2店とも45年以上ある気負いのない店を選んだ。
気のおけない関係ということもあり、2人は相変わらず大らかな感覚でくいくいとお酒を飲んでいる。
わたしはお酌をしながら最近の仕事の話を切り出した。
「物を売る環境がこの10年で大きく変わったよね。久しぶりにエンドユーザーへ仕事をしてシミジミ感じたわ。痛い目にもあって、勉強できた一年だった」
すると男友が「へぇカオラインも大変な仕事をしているんだね。はじめて仕事の話をしたんじゃない?
今まで聞いたことなかったもんね。いつもフラリフラリと苦労なくしているのか思ったよ」
すると女友が「この人はねー、顔で損してるのよ。見た目がこんな顔だから苦労してませーん。大変でありませーんって見られちゃうんだよ。何?何百万のキャンセルがあったの?それはあなたがお金に困ってませーんと見られてんだよ。悲壮感が顔に無いから勘違いされるんだよね。大変さが感じられないから」
わたしはくいくいと津軽塗の盃に流れる鶴齢が今宵はさらに美味しく感じていた。
女友はすっかりご機嫌で鎌倉に帰る最終電車を乗り過ごし我が家に泊まることになった。
わたしがお風呂から出ると敷いた布団の上で女友はすでに爆睡している。
朝まで続いた耳慣れないイビキを二重奏の音楽に感じながらわたしもぐっすりと眠れた。
ともだちってよいものだな。