はてしなく

もう、最近目がショボショボである。

通常の仕事に加え、仕事先のパソコンで見積もりを作る大嫌いな作業によるものだと自覚している。

「あのね、わたし、嫌いなのよパソコン。わたしは自由に動きたいんだから」と指が言ってくる。

ならば自由に書きなされ、ホラホラとペンを手渡すとミミズのような字を綴るが読めない。

「もうね、お疲れなのわたし!」拒絶する指と連鎖して目が霞をかけてもう見えませんと訴えてくる。

「大きいばかりでひ弱な!」と目を叱咤して電車の席に腰掛けると前に人影が。

目がわたしに告げてきた「ゴボウです!ゴボウです!」

何を馬鹿なことを、電車にゴボウがあるわけないでしょ。もっとしっかり見なさい!

そういって霞のかかる目に指示をした。

霞がすこ〜し晴れてわたしの脳は「ご ぼ う」と認識した。

脳まで誤作動したのかとじーっとそのゴボウというものに目を見開くと

確かにある、目の前に2本。ん?でも長芋?

目の前の人影は細く黒い棒のような足にモジョモジョと生えている毛がゴボウや長芋に見えたとわかった。

それにしても珍しく随分モジョモジョしているなとその棒の足を見ているうちに

今夜は長芋でも買って精をつけるか、それともゴボウでキンピラを作り腸の整調か?

頭で巡していると目の前の影が降りて行った。

目の前が広くなり向かいに色白の女性が足を組んでいる。

その白い肌を見ていたら好物の豆腐に見えてきて、いいなぁ豆腐もなどと再び巡りはじめた。

目がショボショボだと霞んで見えないが、見えないものを見させてくれることもあるのだと

えらくお腹が空いて電車を降りた。