多忙

急がしくしている時ほど、追い打ちをかけて急がしくなることが多い。

某デベロッパー様のモデルハウスのコーディネートの依頼を受け、

プレゼンするための資料作りに不慣れな上に、勝手も悪く、

不器用ならば時間をかけるしかないと自分に言い聞かせ

4日間1日12時間もパソコンで仕事をしていた。

その4日目の夕方、時間を惜しんでいたところに携帯が鳴った。

以前、銀座でナンパされたおば様からだ。

前回、破傷風になりかけたと嘆いた内容の電話だったので気の毒な思いで電話にでると

「もう暇で死にそう。あなた!暇すぎると本当に死にそうになるの知ってる?」と元気な舌ったらずの声がした。

わたしは暇になる状況ということさえ想像できない人生。

「いいじゃないですか。お金も時間も健康もあるなら、海外旅行か、国内なら温泉?わたしならしたいことたくさんありますよ。今はガーデニングがしたいです」と答えた。すると

「いやよ、旅行なんて人に気を使うし、食べ物の好みも違うのに。

え?ガーデニング? ウチにも猫のひたい位の庭が玄関横にあるけどいつも植木屋に頼んでるのよ」

おば様の返答を聞きながら、いつもこの方はダメだしばかりだなと思った。

「何か習うとか、してみたいことないのですか?」とわたし。

もうこの手の話なら電話をきりたいなーと思い始めてきた。でも切った後におば様がポツンと一人でいるのを想像し、可愛そうだなと思いながら、途中から携帯をスピーカーに切り替えてパソコンを再開し始めた。

電話の向こうでは今度軽井沢か箱根に行かない?と言っているがわたしはまず明日の資料を完成させるのに必至で返事もおろそか。

おば様が「あなた忙しいということはいいことよ。お仕事成功しているじゃない、頑張ってね。社会に相手にされているウチが花なのよ」と言って話を閉めくくった。

電話を切ってから社会に相手にされない自分を想像してみた。

社会に相手にされない時、それはベッドか布団の上で天井を見つめながら愛する人に手を握ってもらい、

「シャバよさらばじゃ」と言うギリギリ迄は無いな、と思った。

いかんいかん、そんなことより資料作りのカウントダウンが迫っている。

おば様がパソコンできたらなー。