真冬の流れ星

美術学校で知り合った男性から1月の大雪が降る日に手紙が届いた。

「今夜、流れ星が見れます、願い事を考えておいてください」。

その日は私の18歳の誕生日だった。

流れ星が見れるって、こんな雪の日でも見れるのかと思いながら願い事を考えていた。

夜になり部屋の窓からシュルシュルっと明かりが空に向かって登ったのが見えた。

登り星?窓を開けると明かりの元に彼がいた。

雪の降るなか花火を打ち上げていたのだ。

恋心を抱いていたなら窓から抜け出して会いに行っただろう。

まったくそんな想いがなかったので「ありがとう!」とスケッチブックに大きく書いて窓から見せた。

すると彼はこちらに手を振り側にある車に手をかけた。

なかなか車に入ろうとしないのでこちらも窓を閉めにくい。

雪が部屋にパラパラ入ってくる。

どうしたの?と書き足すと彼はジェスチャーで車のドアが開かないと伝えて来た。

驚いてそっと玄関から抜け出し車に駆け寄った。

「あ、開いた」と彼が言った。

安心して帰ろうとする私にせっかくだから少しドライブしない?と言った。

車は公園沿いを走っていた。雪をまとった枝が大きな木のトンネルを作っている。

その下をくぐりながら街灯でオレンジ色に染まる雪が炎のように暖かく見えるのを眺めていた。

短いドライブを終え私はすっと部屋に戻った。

流れ星に掛けた願い事も車での会話も今では覚えていない。

ただあの夜のシンシンと降る雪がまるで生きているような暖かさは今でも忘れられない。