名前をつける1

今から30年以上も前の高校1年の週末、

パルコで買い物をしていると綺麗な背の高いお姉さんと小柄のお兄さんが声をかけてきた。

「ねぇねぇ、あなたどこかのクラブに入っているの?」

驚き顔を上げるとお姉さんは長い髪をかき上げながら笑顔を向けている。

「いえ、どこにも入っていません(新体操部を中学で辞めてから茶道部くらいしかしていないし)」とそっけなく答えると

「あーそー?よかった!じゃぁ、ねぇねぇ電話ちょうだーい。私ね、モデルしているのぉ」

そう言って名刺を差し出した

XXXXXX モデルエージェンシーと書いてある。

必ず電話してねと、と言い残しお兄さんと去っていった。

私は部活の勧誘かと勘違いしたことを恥ずかしく思った。

それから数日間、考えた。

あのお姉さん、待ってるのかなー私の電話。

そう思うととりあえず電話しようと思い、ダイヤルを回した。

あっけなく私は事務所に行く約束をした。

事務所のドアを開けるとお姉さんが嬉しそうに出迎え、

中では綺麗で背の高いお姉さんが数人おり化粧をしていた。

「ウレッシーぃ、本当に来てくれるなんてぇ」というお姉さんの言葉を聞いて

むむ?もしかしたら騙された?、どこかに売られちゃうの私?と心細くなった。

そこへドアを開けて体格と風貌のある男性が入ってきた。

お姉さんはその男性にこう言った

「ねぇねぇ、この子よーこの間話した子。雰囲気あるでしょ!いいと思わなーい?」

男性は席に座り、私に名刺を差し出すとあれこれ質問を始めた。

このモデル事務所の社長だった。