花屋の笑顔

月に何度か花を買いにいく。

今日、いつも行く花屋さんが閉まっていたので初めての花屋に入った。

手前には綺麗な植木鉢が所狭しと並べられている。

「切り花を見せてください」というと店先にいたおじさんは箒で濡れた床の葉を掃き出した。

ショーケースに少し大ぶりな薔薇が色とりどりに並んでいる。

「薔薇はいま1本おいくらですか?」と私。

おじさんは「300円です」と答える。

「このガーベラは?」

「それも300円ですね」

あれこれ花瓶3個分の花を選んだ。

少し柔らかい色があと2、3本欲しいな。

「この薄紫の薔薇はおいくらですか?」かなり大きく花びらを開かせていた。

「あぁこれは一回り花びらを剥きますのでサービスでいいですよ」というとおじさんは薔薇の花を一回り取りはじめた。

すると今まで人気がなかった奥からおばさんが店に出てきた。

ちらりと私の方を観る。

おじさんのサービスという言葉を聞いたからだろう。

おばさんのいらっしゃいでも無い、笑顔も無い視線が向けられた。

そこへ店先に女性が立ち止まり、鉢をいくつか手に取り見始めたので

私は「どうぞお先に」と中にも入るよう声をかけ手で促した。

すると女性は2鉢持ち、奥から出てきたおばさんに手渡すとおばさんは笑顔を見せた。

おじさんはその間、サービスねといった薔薇の花を残り3本全部と他の花と一緒に包んでいた。

もし鉢を買う女性が来なかったら奥から出てきたおばさんは店先で何をしていただろう。

私が会計をしているとおばさんは奥に引っ込んでいった。