卒業

今でもあの時のことは忘れられない。

私の小学生の卒業式。

 

3階の教室を出て1階まで、

1年生から5年生の生徒が腕でトンネルを作っている。

その下を私たち卒業生が潜って歩くのだが

時折、声がかかる。

「お姉ちゃんさよなら」

最初から涙が溢れてきて視界が見れない。

前の人の洋服を掴むように歩いていた。

何故、あんなにあの子は泣いているのだろうと思われるほど泣いていた。

私はここにいる同級生や友達や、先生やこの校舎も

もう共に語り、触れ合うことは無いのだろうと思うと無性に胸が苦しくなり

大人になっていくということの寂しさと、会者定離の世の中をどう受け止めてよいか

心の中が嵐に襲われたようなった。

校舎を出て母は少し前を歩き、私はとぼとぼとその背に着いていきながら

道路に大粒の涙を落としていた。

「あぁこれで子供ではいれなくなるんだな」そう思った。

何から卒業した瞬間だったと同時に、何かに向かい始めた感じがした。

今でもこうして生きていることはあの時の卒業となんら変わりないはずなのに

私は昨日の続きでいる時があり、時折あの頃の私に叱ってもらうことがある。