巷では友人まで迫ってきていたインフルエンザ。
他人ごとで私はなりませんよと高をくくっていた。
確かに寒い夕暮れのテラスでの1時間半もの打ち合わせは無謀であった。
帰宅しベッドに入るが一晩中腹部が痛くて寝れない。
七転八倒しているうちに朝が来て熱を計れば37,7℃。
酷い腹部の痛みとダルさと頭痛が大きくなり、昼間には38,5℃。
久しぶりにみる数字に「はて、この熱はいつ以来だろう」と天井見上げて思い出してみた。
熱が出ると決まって思い出すのは、子どもの頃に母がリンゴを擦ってくれたことだ。
18歳で親元を離れた私はリンゴの思い出はそれ以降は無いのだが
日頃厳しい母がリンゴやアイスクリームをセッセッと食べさせてくれるので
自分は死の病か?と思ったことを覚えている。
歳を重ねこうして一人でいる時に体調を崩すと困ることもある。
「今、こうして天井を見上げて病で寝ている人は世界で何人いるのだろう」
ふといつもは思わないようなことを思ったりする。
「そういえば、父や母は働いている時に、体調が悪いと早退してきたことなど一度も無かったな」
「親が寝込んで看病しなくてはならない」ということもこれまでに一度も無かったなと
天井を見ていたらあれこれ思い浮かんできた。
父方の両親と住んでいた母は寝込むことさえ許されない環境だっただろう。
それから見ると一人でいつまでも寝込んでいられる今の自分はもったい無いほど幸せなことだ。
元気になったらあれもしよう、これもしようとフツフツとこれから芽吹くフキノトウ如く
見上げる天井に咲かせる花を思い描いている。