ビアホールのアルバイト

大学一年生の冬。
麒麟ビールの出資したビアホールと呼ぶにはおしゃれすぎる高級居酒屋で1ヶ月バイトをしたことがある。
人生初の飲食のバイトはドキドキだった。
お客様のご注文を受け、ビールとお通しを持っていく。
店のウエイトレスは女性の私から見ても惚れてしまうような個性派ぞろいの女子学生らで、

ロッカールームで着替えるときはクラクラするような時間だった。

さて、お客様が5時半の開店と同時に来る。

少し年配の品のあるおじ様が一人。

黒服のマネージャーがお客様を席に案内し、

私たちはスタンバイの位置で順番に並んでいる。

向こうで黒服がお客様の席で私においでおいでと手でしている、

順を抜け、お客様のそばに行くと黒服が「お客様のご注文をお伺いして」という。

人見知りで愛想を振る舞うことを知らない私は「何にしますか」と平坦に言うと

「君は何が飲みたい?」と逆に質問された。

私は内心ムッとするが、それも顔に出ている有様だ。

お客様はマネージャーに向かって「ここで美味しく飲めるウエイトレスさんは、あの子とこの子が運んできた時かな」と言った。

まだ1週間も日が経っていなかったので驚いた。

それからその男性は毎日来てあの子とわたしに注文を言いつけた。

他のウエイトレスも忙しそうだったが私はどんどん他の人からもご指名で忙しくなった。

指名されてもバイト料は変わらない。勝手にお得意のお客様が指名をしてくる。

18才の私はただただへんてこりんの忙しいことに世の中の矛盾を感じたのだ。