子供の頃に住んでい家には温室と葡萄棚があった。
実りの季節になると葡萄棚に実った少し酸っぱい葡萄が食卓に出る
だれも横入り出来ないほど小さな粒がぎゅっと詰まっている。
神様はよくこんなにもぎゅうぎゅう実るようにつくったなと感心して一粒もぎると
少しできた葡萄の房の隙間からドロンと蜘蛛が出てきた。
ギョとして葡萄の房の中を覗くと蜘蛛の巣ができている。
食べようとしていた葡萄と蜘蛛と巣。
子供の頃のわたしには強烈にショックで
庭の葡萄を食べるのが嫌になった。
葡萄恐怖は庭からお店の葡萄に広がり
食卓でコロンと粒にしてもらった葡萄しか口にしないようになった。
大人になって好物のワインが葡萄から作られていることもあり
葡萄へのイメージが少しづつ緩和した。
今では葡萄が食べれなかった時期を取り戻すかのように
店先で葡萄を見かけると決まって葡萄を買って帰るのである。