生き急ぎません

今朝早く大きな病院の営業開始時刻に合わせて行った。

すると既にロビーには平均年齢65歳以上の患者さんが

再来申し込み機の8時開始を待ってNHKのテレビを見上げながら大勢座っていた。

8時の音がテレビから、病院の鐘から鳴ると同時に

我先にと再来申し込み機前にこぞって進む。

車椅子を押した年配の男性が

「あんた私の後から来たんじゃないか」とある男性に声高に言放った。

すると言われた男性も

「いや、あなたよりこの方の後に来たので列が違う」と言い返す。

それを見ていて後からロビーに来た私はどの老人の後ろだなどとわかるはずもなく

5番目になっていたが私は並んでいた列を抜けての一番後ろの20番目に並びなおした。

一番後ろなら誰からも「俺が先だ」と言われないで済むだろうと思ったからだ。

後ろに並んでふと読んだ本を思い出した。

女優の岸恵子さんが本に書いていたある一節を。

「バス停で並んでいると私の方が先だったわと年配の女性に言われ

私の方が先だったのにと思いながら

はいはい、どうぞ私はまだ生き急いでおりませんので、と心の中でつぶやきながら

その女性に列を譲った」。

私はこのロビーで多分一番若いと思われる。

どうぞどうぞと恵子さん同様に譲って当然なのかもしれない。