会いたくなる人(後編)

桑の葉を掻き分けて真っ白いクネクネした虫があらわれた。

「あなたダーレ?見かけないわね。

わたしはカイコ。あなたは?」

「わたしはレレレ.....だった」

「変な名前ね。しかもだった?とはあなたは記憶喪失なのかしら。

どうでもいいけど、その座っている葉っぱは私のご飯なの。潰さないで。」

「カイコはこんなにたくさんの葉っぱを食べているの?」

「そう人間という生き物がいつもこの葉っぱを用意してくれるから

お礼に真っ白い絹糸をたくさん作るのよ。それに....」

「それに?」

「私たちカイコは人間の元でなければ生きれないの。

人間から離れて死んだカイコをたくさん知ってるわ。だから人間に嫌われたら大変なことになるの」

「ふうん。何だか面倒ね。自分だけで生きていかれないなんて」

「あ、お話していたら絹糸が少なくなってしまう。もうお話はおしまい。さようなら」

カイコはそう言って無心に葉を食べ始めた。

そういえばお腹が空いた。 

こんな体になって何を食べればよいのだろう。

もしかしたらカイコは幸せなのかもしれない。

人間がご飯を用意して、寝る処まで与えてくれるんだから。

すると空から固い物が落ちてきた。

「イタタタタ」