海の朝

江ノ島が見える小高い丘に立つホテル。

朝、部屋のカーテンを開けると

太平洋からの波が七里ケ浜の浜辺へと

白いレース編みのようにウエッブをきかせ寄せている。

大きな空を何羽のトンビが舞っており、

時折、こちらのホテルの芝にもその影を落としながら

わたしには見えぬ獲物を探している。

今日一日、何も約束も無く

必ず行かなくてはいけない場所も無い。

気の置けない姉とフラフラと歩いて行く。

歩きながら、どこか懐かしい心持ちになった。

「あー、かなり昔、こんな感じを覚えている。

なんだろう、いつだろう、この何にも心配無く、足かせもなく、

好奇心だけで心身が一杯になる瞬間。

空気が新鮮で、

吹く風もはじめてのように眩しい」

毎朝こんな心持ちで目覚めれたなら

そう思わずにいられない海の朝。