冷たい雨が降る。
梅の花は開きかけた身体を縮こめる。
春が来そうで、少し遠のいて。
3月の雨は北国での小学校の卒業式を思い出させる。
みぞれの中、傘をさし一歩前を歩く母。
わたしは雨でとけた雪に足をとられながら
顔から涙を流していた。
同級生らと一人だけ違う中学校に通うことを決心した自分を悔やんでいた。
違う中学校に通うことを同級生には話せなかった。
「じゃ、中学の入学式で会おうね」と声かけ合った数分前が随分と昔のことに思える。
何故、違う中学校に行くことを決めて、それを友人に言えなかったのだろう。
もっと違う別れができたのかもしれないのに。
こうして、どんどん、自分で何かを決め、悔やんだり、泣いたり、これでよかったのだと思ったりして
子供のままではいられなくなるのだな、と思った。
みぞれの中、いつもよりゆっくり歩く母の足取りが余計切なくなり
うつむいて泣くわたしの涙はぐちゃぐちゃに融けた雪へと落ちていく。
そうだ、流れて行ってしまへ、
涙も雨も一緒に流され、そのうち大海へと辿り着くのだろう。
涙も雨も同じ海から生まれたのだから
どんどん流れて還って行け。
心にそう浮かんだころ家に辿り着いた。