知ってはいたが読んではいけない気がして避けていた本がある。
森光子さんのロングランの舞台で有名になった林芙美子さんの「放浪記」。
放浪の私がこの本を読んでどうすると戒める気持ち半分、真に合点がいっては放浪の烙印を押された気になるのではないかと恐れていた。
「人生は旅のごとし」と思いながら放浪という意味とは違うと線を引いていた。
放浪も旅と何らかわりないとこの歳になって思うようになりこの秋から読み始めたのである。
するとおよよ、困ったことに合点なことが多い。
10代の終わりから20代の自分行方不明、夢に押しつぶされて自暴自棄。
この「放浪記」寝床での本にはかなり相応しくない。
芙美子さんの書く一行一行に頷き、なかなか読み進めずにいる。
反面、八王子、浅草、渋谷、太子堂、銀座、新宿などと東京の地名が出てくると
どの変にいたのかな?と車窓からいないはずの芙美子さんを探すようになった。