いまどきのアリと私

好き勝手に生きている私に戒める例えで父からイソップ物語りの「アリとキリギリス」の話しをことあるごとに聞かさせた。

もちろん、私がキリギリス。

物心つく頃から聞かされたそのキリギリス話は、戒めというより洗脳のようで私にとっては酷く恐怖の例えだった。

大人になり、その物語りも国によっては解釈が違うのだと知り見解が広がることの喜びを心から感謝した。

ある国ではアーティストでフリーダムな欲のないキリギリスというように解釈がされ、アリの方が団体行動でしか生きれず、実生活に追われるつまらない人の例えとなっていた。

まぁそれでも、日本にいて父の娘でいる限り私はその怠け者のキリギリスなのだろうと思っている。

そんなキリギリスの私が今日、仕事帰りに電車に揺られ立っているとガラス越しに2人の女性が見え、声が聞こえて来た「あ、アリがいる」「えっ!蟻?」と。

そのガラスに写る女性たちは間違いなく私を観ている。

私がアリ?

喜ぶのも束の間で何やら首がくすぐったい。

指で払うと何かに触った。

2人の女性が「あ、あ!」と声を重ねて下を観ている。

どうやら私の指はアリを一度で払いのけたらしい。

何で肩にアリが??と思い巡らしていると、先ほど街路樹でメールを打つのに木の下で立ち止まっていたのを思い出した。

ふふーん、そうか、あの時アリが葉から落ちたのかも。

トコトコ歩く私によくそのアリはしがみついていたものだ。

感心しているとくッくッくッと可笑しさが込上げて来た。

最近のアリは、キリギリスの肩に乗って楽するのかしら。

きっとアリも初めて乗るキリギリスに驚いただろうな。