父は退職してから有機野菜を畑で作っている。

見よう見まねで畑を作りもう15年程になる。

それはそれは美味しい立派な野菜が採れ、

野ネズミにとうもろこしを食べられたことが遠い昔のことのようだ。

その畑を父は今年で辞めるという。

80歳になったら辞めると数年前から聞いていた。

100坪程の畑をいくら平均値より体力、腕力があるといっても80歳である。

身体が辛くない訳が無い。

ここ数年前からはあちこち身体が痛いといいながら父は畑に向かっている。

「このくらいの大きさがあればお前と姉家族が食べるには十分な野菜が採れるだろう。

日本はそのうち食料が無くなる、この畑があれば何とかお前達も食べるには困らないだろ」

父はそう言った。

お前達が畑を引き継ぐというならこの畑は取っておくと3年前に言われ、

何も出来ず、策無く月日ばかり経ち

刻一刻と父の最後の畑作業が始まろうとしている。

こう毎日気にしているというのに

何も出来ずにいる。

いいのか、私よ。