
ぬくぬくとベッドで夢を見ていると
とても近くで車の鍵が「ピッピッ」とリモコンで何度も操作する音がする。
寝ながら数えていた。
何度もピッピッ。何台もピッピッ。
何台も?
それはおかしいだろうと朝の4時にガラッと窓を開けた。
4台ものパトカーが赤灯を回し窓の下に止まっている。
余りに開け過ぎた窓をソロソロと締め戻し
細い隙間から覗いていると
制服を着た警官がサーチライトを手にあちこちの建物を照らしている。
何だろ?
しばらくすると2人の警官に両脇捕らえられた黒ずくめの男が目の前のパトカーに乗せられている。
テレビニュースで聞くまさに黒のニット帽子と特徴のない無表情の顔した30代くらいの男。
この男と道ですれ違っても私は怪しい人とはわからないだろうな、などど思いながらしばし観ていた。
その男がパトカーでいなくなった後も、サーチライトを手にした警官はあるアパートを写真に撮ったり、丹念にあちこちを確認していた。
そのアパートは私も前から気になっていた建物だった。
古い建物の間口の狭い入り口は細長い廊下が奥まで続き、
その前を通ると間口のそばの郵便受けに誰かが立っている様な気配を感じ
いつもドキリとしていたのだ。
まさか現実に起きるとは。
時計は4時半をさし警官達はいなくなった。
そのあと直ぐに年配のおばさんがカゴをぶら下げ道を通って行く。
つい先ほどここで逮捕があったことなど知らずに。
新聞配達のバイクが止まる。
数分前のことなど関係ないように。