
もう、そんなになるのか。
41年前のこと。
わたしは父の転勤で母と姉の4人で東京、杉並区の小さなアパートに住んでいた。
6畳の居間、4、5畳の子供部屋、2畳程度の台所である。
そのアパートは同じ銀行の方も貸与されており、子供達には遊び仲間が居てたのしい環境だった。
高度経済成長の最中、
当時はまだ自転車に乗っている子供はチラホラ程度で、
転勤族の我が家にはなかなか自転車はやって来ず、
自転車に乗る友達の後を追うように走っていた。
そのためか足が早くなり運動会でリレー選手のアンカーとしてずっと一位だった。
この話しをすると今の友人達には信じてもらえない。
わたしは走ることなど無い人に思われているのだ。
自転車に乗れるの?と先日も友人に驚かれた。
「乗れるわよ、今日も帽子抑えながら、スカートを抑えるのに片手運転したのよ」
へぇぇ、という友人に得意げな顔をした。
今日、杉並区の小道を自転車で走っていると、とても懐かしい香りがしてきた。
41年も経ったけど何らあの頃とわたしの根は変わらず
その懐かしい香りをクンクンと感じ、
相変わらず涙もろく、お転婆で、ちょっと手に皺が増え、強がりに筋が入ったくらいである。
わたしは公園で遊んでいる6歳のわたしに声を掛ける。
「ねぇ、どう? わたしはあなたの41年後のわたしなのだけど。わたしでよかったかしら?」
公園の葉のざわめきが幼いわたしの声をかき消して聞こえない。
きっとまだ聞くには早いのだろう。