
夜の帰り道、どこから甘い香りが漂って来た。
春の花、沈丁花の香り。
中国から渡り日本では室町時代からあるそう。
香木の沈香のような匂いがあり、チョウジ、グローブのような花をつけ、葉は月桂樹の形に似ている。
名の由来はギリシャ神話の女神ダフネ(ダプネ)から来ているらしい。
ダフネは河の神の娘でアポロンにバカにされたエロスが仕返しに”愛情を芽生えさせる矢”をアポロンに撃ち、”愛情を拒絶させる矢”をダフネに撃ったことから、アポロンはダフネを求め続け、ダフネは拒み続けた。
湖畔に追い詰められたダフネが父に助けを求め月桂樹に変えられたという。
強い芳香を放つ沈丁花。
ツツツツっと追いたくなる香りはダフネの魅惑の仕業かもしれない。
室町時代からどれほどの日本男性がダフネを追い求めたことかと思い巡らす春の夜である。