すあまが好物である。
餡が苦手だった私には救いの和菓子だった。
すあまとの出会いは小学3年生に遡る。
当時、祖父母と同居していた賑やかな6人生活。
その家の傍に市場があり、その中に和菓子屋があった。
そこでは年中すあまを売っており祖母がおやつにくれたのが出会いであった。
私は家の中でよりよくみんなが暮らせるようにと提案箱をつくった。
月に一度、居間で家族皆がお茶を飲みながら、その提案箱に入れられた提案について話し合うという会を「家族会議」と名付けて企画したのだ。
第一回目の日、まだ春遠い3月下旬ごろ家の中に花を飾りたいと思い近くの山にネコヤナギを採りに出かけた。
坂を滑りおちながらもネコヤナギを手に入れ玄関にを飾ると、
すぐにその近くの和菓子屋へすあまを買い行った。
すあまは他の和菓子より安かったので、わたしのおこずかいで6人分のすあまが買えた。
家にもどりお茶の用意と提案箱の提案書を整え、皆が集まるのを居間で待っていた。
母は忙しなく片付けをしているようでなかなか着席しない。父は仕事でまだ帰ってこない。祖父はテレビを食入るように見ていた。
結局、祖母、姉、私の3人の家族会議となり提案箱には祖母と姉の提案だけで他は見当たらなかった。
次の日、すあま2個だけ茶箪笥に残っていた。
父と母の分。
子供心に何かしてはいけないことをしてしまった気がした。
それから10年ほどして祖父母とは血がつながっていないことを知り、
今もすあまは好物なのだが、時折しょっぱい味がするのである。