道の花

あれがいじめというものだったのだろう今振り返れば小学3年生の頃からの記憶がある。

私は転校生気質のせいか誰とでも隔たり無く話しをするらしい。

転校した先で嫌われている女の子が数人いた。

一人はヤジというあだ名の子でいつも汚い格好をしているという理由からだった。

もう一人の子は家が貧乏で歯が抜けていても治しに行けないとからかわれていた。

もう一人の子は片親で、しかも一人っ子でいつも嘘ばかりつくという。

私はヤジと帰る方向が同じだったので1度ご自宅に遊びにいったことがある。

彼女のお母様はとてもしっかりとした口調のご年配の方で汚らしいイメージなど家にはなかった。

そして年の離れたお姉様がいたことを初めて知った。

歯が抜けている子の家には行ったことはないが、ぽつりぽつりと彼女と話していると彼女は4人姉妹の長女ということがわかった。お母さんの代わりに生まれたばかりの赤ちゃんの世話と姉妹の子守りをしているという。

学校ではいじめられてオドオドしているけど自宅ではたくさんの姉妹の面倒を見ているのだなと

級友たちが知らない一面を知った。

片親の子の家には数回行ったことがある。

お母さんが離婚して一人っ子の彼女はいつも寂しそうにしていた。

万引きしてとってきた品を見せられたことがあり、私は彼女に叱ったのだ。

そんなことをしてはお母さんが悲しむよと。

彼女はもうしないと言っていた。

一人一人の子供にも学校では知り得ない世界を持って生きているのだと思い知らされた。

皆それぞれが自分の事情ではなく親の事情や家庭環境が彼女らの生きる社会を変えてしまうのだろう。

彼女らには何の問題は無くむしろ一生懸命生きているような気がした。

私は私立の中学高等学校に進み彼女らとは接点がなくなったが風の噂でヤジが高校卒業して就職したと聞いた。

姉妹一杯の子は高校を中退したと聞いた。

そして万引きした子は地下鉄駅で見かけたのだ。

高校2年生だった。長いスカートに茶髪のパーマでカミソリを持って女学生を脅していた。

彼女は私に気が付き話しかけて来た。

その笑顔は先輩に頬をカミソリで切られたとかで小学校を卒業してから壮絶な人生だったのだろうと

心が痛くなった。

今の時代。

子供がいじめられ、いじめ、自殺するようなことがこんなに増えると思わなかった。

中には解決が上手くいかず、引きこもり不登校になる。

それは家庭環境が原因でも無く、彼、彼女らが原因でもなく起きる。

今日生きるのがやっとの国で、毎日多くの子供らが死ぬ国からいじめなどの話しは聞こえてこない。

豊かな国、美しい国で、

花は道端に咲くと雑草と呼ばれるのだろうか。