不覚にも涙が溢れた。

時間をつぶすように入ったビストロで。

自由ケ丘で初めて一人で飲むワイン。

まだ時間があるので手持ちの詩の本を読みながら

咳が出ないかとおそるおそる一人乾杯し始めた。

坂本遼の「おかんの死」の詩は

農家で貧しく苦しんで逝った母のことを綴っていた。

あまりにも綺麗な作者の心に飲みながら読んでいる自分が恥ずかしく

気づくとまだ治らない咳が込上げ苦しいのか悲しいのかわからない涙が流れた。

           詩はこころの歌というが私は何を詠えるのだろうか。