
北国から離れ経験を積みに東京で暮らしているが
最近父は帰省する度にあと2、3年後には帰ることを考えなさいという。
どうやら日本男性の寿命を越えた父は神様のおつりであと2、3年は生かされているからそのうちに帰って来て欲しいらしい。
あの世に行ったら残された母の面倒を見て欲しいというのだ。
母の母方の家系はボケの家系らしく、母のお母さんは93歳でまだ生きている。
随分前にボケて自宅で面倒見れなくなり専門の病院に入院してから
十何年経っているが会話もできず、今は食事はパイプで身体に入れている。
その有様を長いこと見て来た母は自分がボケる事が一番恐怖なのだ。
ボケは一つ飛んだ世代に遺伝するらしいからお母さんではなく私がボケる番だとなだめても
自分がボケると怯えてる。
2、3年後、どうなるかなぁと夜中に思い巡らしていると
「お誕生日おめでとうございます。どんな誕生日を過ごしましたか?今年のお祝い金は先日お送りした毛ガニで相殺しますね」と母からメールが来た。
しっかりしているなぁと思ったが、ん?誕生日?まだ4日早いじゃない。
とうとう来たか!一瞬に来たのか?元旦までは普通だったじゃないか!と母が急にボケたのかと驚いて慌てて返信した。
すると「日にち間違えました(絵文字)」のメールが同時に来た。
ほっとする気になれず一気に2、3年後が現実に襲いかかった疑似体験をしてすっかり眠気が飛んだ。
人は生まれて来たのだから死なないといけない。
育てていただいたから、見届ける義務があるような気がする。
今朝見た眩しい朝陽が大きな夕陽に変わり今夜は満月のお月様である。
ボケも世話も死もこれと同じ摂理ならば丸く考えてみようと思う。