母の料理 弁当編

中学1年生の朝、

眠い目をこすりながら7時のテレビをつけてご飯を食べていたら

母が私の弁当を作り終えダイニングテーブルに運んで来た。

母の作る弁当はとても彩りが綺麗で栄養バランスの採れたおかずがギュウギュウに入っており、

ご飯はいつも胡麻と小梅がのっている。

私は寝ぼけてそのお弁当を包む時にテーブルから絨毯の床にヒックリ落としてしまったのである。

私は弁当の蓋を絨毯との間に差し込みひっくり返した。

おかずとご飯がギュウギュウのお陰で溢れること無く弁当は無事元にもどった程である。

同級生と弁当交換をジャンケンですると決っていつも母の弁当が先に選ばれた。

私は友人のお母さんが作る弁当で感激したことは一度も無かった。

母の作る弁当が普通の家庭よりレベルが高いとわかるようになり、何故そんなに上手に作れるのか、花嫁修行の料理教室通いの効果か?と思っていたがここ最近になって理由がわかった。

父の勤める職場の独身の部下数名がいつも不健康そうな昼飯を食べていたらしく

父が母に彼らの弁当も自分と同じように作ってあげて欲しいと頼まれ、

「上司の奥様が作ってくれる弁当」として母はどうやら研究したらしい。

まして申し訳なく思った部下達がお弁当代を払っていたというのだから尚本気になったのだろう。

もう40数年前の話しだ。

わたしは中高生と6年間母の弁当を持ち続け、食べ続けたがお代をいただけるような弁当は作れはしない。