母の料理 にぎり寿司編

にぎり寿司を寿司屋に食べに行ったのは多分、社会人になってからでは無いだろうか。

我が家は寿司を食べないのである、ということは無く

我が家は寿司は自宅で握るのである、ということなのだ。

そう、寿司を母が握っていた。

大きなおひつに炊いたばかりのご飯をごろんと転がし寿司酢をいれパタパタ扇ぐ。

母が市場のお魚屋さんで買って来たネタを広げる。

父指定の粉のわさびを多めにこねる。

母が片手にご飯をのせ始めたら寿司屋開始となる。

皿にのせられた母の握ったシャリに私が人差し指でわさびを撫でていく。

油断するとつけ過ぎ、気にしすぎると少ない。

それに続いて手際よく母がネタをのせて行く。

一人前10貫だ。

出来次第に祖父、祖母、姉 (父は刺身だけ食べている)、私、母と食べる。

母が食べている時に父が刺身を食べ終わり、母は台所で父の分を握り始める。

母の食べかけの握りが乾いて行くのが気になりそっと箸で水をつけると「いたずらするな」と父に叱られた。

父の握りを作っている母の握りが乾いて可哀想だ!といいたかったが我慢した。

作っている母が一番食べた気がしないだろと思う晩ご飯なのである。