
眠りにつくころランプに照らされたコルク床の黒いシミが目に入った。
「こんな所に大きな黒点などあったかな」
顔を近づけたらその黒点が一目散で動き出した。
ここに引っ越して何度目だろう、わたしの悲鳴は。
黒点はカーペットに頭を入れて逃げようとしている。
めくり上げると、こりゃ大変と黒点も必死である。
どうにかしなければ今夜は寝れなくなるぞとわたしも必死である。
小指の爪を床にぶつけ折れそうになりながら黒点を捉えた。
すこし育った赤ちゃんのゴキブリだった。
「お願いします、わたしの前には現れないで」
何度願っただろうここに引っ越して来て。
山の上?に住んでいるのが悪いとばかり
虫嫌いのわたしに毎日虫は挨拶に顔をだす。
おじゃましているのは確かにわたしだが
お陰で心電図の乱れを病院で指摘されたのは
その挨拶のせいではないか?
おいおい虫君よ。