「何故、我が家の娘たちは皆戻ってくるんだろうね」と母が食卓で呟きました。

向かいに座る父は箸を忙しく動かしています。

父が何か言う前にわたしが応えなければと

「鮭姉妹なのよ。きっと家が好きなのよね」とおどけて見せました。

とっさながらもわたしには上出来の応えと安心していると

「育て方、間違ったのかもしれないわね」と母が小声で言いました。

それに対してわたしは応えが浮かびませんでした。

わたしは自信があります。

わたしがわたしの子供なら心労で寝込みます。

そして滅多に見れないほどの悲しみを親にしていることを。

当時は自分がとても苦しみました。

余りにも苦しんでいたのでしょう

見かねた母がわたしの誕生日にメッセージカードをくれました

「前をみてこれからの人生を歩んでください」。

その言葉は余計わたしを辛くさせました。

わたしは普通を装っているけど心配させていました。

母はわたしの知るどの人より

嘘を言わず、純粋で、誠実で、まじめで、思いやりがあって、一生懸命です。

できれば心配させず、安心させる人生をわたしは歩みたいですが

到底無理で、性に合わないことは承知です。

唯一できることは鮭のように遡りながら還ることしかありません。

でもボロボロになり辿り着くと命尽き果てるのではなく

綺麗な泳ぎと装いで「大海は楽しかったよ」と微笑む鮭を目指します。